滝のミニ百科
滝の定義

もとは川の流路の急傾斜部を流れる水を<たぎ><たぎつせ>と呼んだことに始まって、 <たぎる>すなわち水が沸騰するようにほとばしり流れるところを指した。
 川床が急勾配をなして川の水が奔走するところを「早瀬」また「急湍(きゅうたん)」といい、 その勾配が垂直に近くなり、川の水が川床を離れて高いところから直接落下するものを「瀑布」という。 広義の滝は、両者を含めている。
 しかし、最近では瀑布と滝とはほぼ同じ意味に用いられ、早瀬と区別する傾向があるという。 例えば、華厳の滝や那智の滝は瀑布であり、日光の龍頭の滝は早瀬であるというように。 ちなみに古語では「垂水(たるみ)」が現在の滝を指す。
(出典)永瀬嘉平氏ほか著「日本の滝 躍動する水の美と名瀑への招待」(講談社、1995年)

滝の形式
直瀑
山や崖から水が一気に落下する直下型の滝。男性的な滝とも称される。 一般的な滝で、国内にも名瀑と言われる滝にはこの形が多い。滝壺をもつ滝が多い。
(例)那智の滝、華厳の滝、秋保大滝、三条の滝、白水の滝(岐阜)など
分岐瀑
山や崖の斜面を優雅に広がるように流れ下る滝。女性的な滝とも称される。 優美な姿に癒やしを感じる滝だ。
(例)流星・銀河の滝、オシンコシンの滝、滑川大滝、姥ヶ滝、天滝など
斜瀑
急斜面の川床を勢いよく流れ落ちる形式の滝。 直瀑のように水が空中に放り出される訳でもなく、 分岐瀑のようにゆっくりと斜面を伝って落ちる訳でもなく、その中間的な存在。 世の中には数多く存在するが、名瀑と呼ばれるものは少ない。
(例)あかがねとよ(岐阜)など
段瀑
地殻要因により浸食され、二段、三段と階層をもって流れる滝。 直瀑、分岐瀑などで構成され、 その途中に滝壺が形成されることが多く、微妙な色の変化も楽しめることも。
(例)袋田の滝、七つ釜五段の滝、神蛇滝、称名滝、不動七重滝など
渓流瀑
傾斜した川床の上を滑るように流れる「早瀬」の中でも、その高低差が大きいものを渓流瀑と呼ぶ。 登山用語「ナメ」もこの型式の一つ。
(例)平滑の滝、龍頭の滝、四十三万の滝など
潜流瀑
地下水が下流で断崖の中腹から染み出すように姿を現し、落下して滝になったもの。伏流瀑ともいう。
(例)白糸の滝(静岡)、白水の滝(群馬)、吐龍の滝など
用語集
ゴルジュ
川や沢の両側の岩壁が迫って狭くなった所を指し、「廊下」とも呼ばれる場所。 足元を濡らさずに進むことは到底できない場所。泳がなければならない場所なども多い。
チョックストーン
水の流れる川や沢に挟まった岩や石をいい、その岩石の両側を水が流れている。 特に滝においては、滝口にチョックストーンがある場合には「チョックストーン滝」などとも呼ばれる。
(例)明神滝(兵庫県宍粟市)、楊枝大滝(三重県熊野市)、厚谷不動の滝(岐阜県下呂市)など
ヒョングリ
「勢いよく噴き出す」、「跳ね上がる」などの意味を持つ、群馬県や丹沢地方の 方言である「ひょーぐる」などが語源で、落ちる水が岩盤の凹部で跳ね上がり宙を舞う。 非常に躍動感を感じさせる滝の形状を呼ぶ言葉である。
(例)七折の滝(岩手県花巻市)、七滝八壺(奈良県東吉野村)、三室滝(兵庫県宍粟市)、神爾滝(滋賀県大津市)など
ポットホール
川底などの岩石面にできる円形の穴のことをいい、「甌穴(おうけつ)」ともいう。 水流により侵食された岩石面にできたくぼみに石などが入ると水の力により石が回転し、そのうちに円形の穴に広がっていく。
(例)長瀞渓谷(埼玉県長瀞町)、滝の拝(和歌山県古座川町)、鹿ヶ壺(兵庫県姫路市)など
面滝
高さよりも幅のある横長の滝のこと。
面滝・線滝
面滝:高さよりも幅のある横長の滝のことで上流の川幅がそのまま水を落とす滝となっている。 線滝:その逆
左岸・右岸
上流から下流を見て左側を「左岸」、右側を「右岸」と呼ぶ。